月経異常とは
通常の月経とは異なる状態を月経異常と呼びます。通常の月経周期は25〜38日、月経期間は3〜7日、月経時の出血量は20〜140mlとされています。月経異常は、子宮筋腫、子宮内膜症、多嚢胞性卵巣症候群などの婦人科疾患、甲状腺機能異常、肉体的・精神的ストレス、無理なダイエットによるホルモンバランスの乱れ、加齢によるホルモンバランスの変化などの影響によって引き起こされます。
月経異常の症状や状態に応じて、鎮痛剤、低用量ピル、ミレーナ(子宮内留置器具)、漢方薬、ホルモン剤などの治療法があります。お気軽にご相談ください。
主な月経異常
不正出血(不正性器出血)
通常の月経以外に、性器からの出血がみられる場合を不正出血と呼びます。不正出血は、器質性出血(子宮頸がん、子宮頸管ポリープ、子宮内膜ポリープ、膣炎、外傷など)によるもの、ホルモンバランスの異常による機能性子宮出血、排卵期における子宮内膜の変化によって起こる排卵出血などがあります。
月経困難症
月経期間中に現れる症状を月経困難症と呼びます。下腹部痛、腰痛、頭痛、吐き気、腹部の膨らみ感などが挙げられます。これらの症状が日常生活に支障をきたす場合は、治療が必要です。原因は機能性と器質性の2種類に分かれます。機能性の場合、明確な原因疾患はなく、排卵時に分泌されるプロスタグランジン(子宮収縮物質)の関与が指摘されます。若い世代(10代後半~20代前半)では、子宮がまだ成熟しきっていないため、強い下腹部痛を感じることがあります。成熟年齢になると、複数の症状が見られることがあります。器質性の場合、子宮内膜症や子宮筋腫、子宮腺筋症などの疾患によって引き起こされる月経困難症になります。この場合は、原因疾患の治療が必要となります。
月経前症候群(PMS)
月経が始まる3~10日前に現れる、精神的あるいは身体的な症状が、日常生活に悪影響を及ぼす状態をPMSと呼びます。しかし、月経が始まるとこれらの症状は軽減する傾向があります。PMSの一般的な症状には、怒りっぽい、イライラ、抑うつ状態などの精神症状、乳房の痛みや緊張感、腰痛などがあります。PMSは、排卵によって黄体ホルモンが優位になることにより、症状が出やすいとされています。
PMSの症状は、低用量ピルや漢方薬などによって改善されることが多く、また、PMSの精神症状が強く出る場合には、イソフラボンの摂取によって効果があるとされるPMDD(Premenstrual Dysphoric Disorder)もあります。
頻発月経
正常な月経周期(25〜38日)よりも短い期間(24日未満)での月経を、総じて「短周期月経」と呼びます。この場合、出血は頻繁に起こるものの、月経周期が短くなるため、無排卵性出血(無排卵周期症)が疑われます。排卵がある場合は、黄体機能不全(黄体ホルモンのバランス異常)の可能性が考えられます。
稀発月経
月経が38日よりも長く、3か月未満の間隔で起こる状態を指します。この場合、月経から排卵までの期間が長くなり、排卵が円滑でない場合、卵子の品質が低下し、不妊のリスクが高まります。原因は、多嚢胞性卵巣症候群(卵巣内で男性ホルモンが多量に作られ、排卵が困難になる状態)、全身的な内科的疾患、ストレスや急激な体重の増減などが挙げられます。
無月経(続発性無月経)
3ヶ月以上月経が発来していない状態を続発性無月経と言います。卵巣から排卵されていない状態であり、ホルモンバランスの異常が考えられます。ストレスが原因となっていることが多く、月経を調節する働きのある脳の視床下部が混乱することで起こると言われています。そのほか、甲状腺機能亢進症、多嚢胞性卵巣症候群といった疾患、薬剤(抗うつ剤、降圧剤など)が原因となることもあります。
過少月経
通常の月経時の平均経血量は20~140mlとされていますが、その量が極端に少ない場合(20ml以下)は、過少月経と診断されます。この状態が継続すると、無月経や過短月経を引き起こす可能性があります。過少月経の原因としては、排卵障害や黄体機能不全、卵巣から分泌されるホルモンの機能低下、子宮発育不全などが挙げられます。
過短月経
通常、月経の持続期間は3~7日間とされますが、2日以下で終わってしまう状態を過短月経と言います。この状態では、月経時の出血量が極端に少なくなり、過少月経という状態になることが多いです。原因としては、ホルモンバランスの異常、子宮の病気(子宮発育不全、子宮内の癒着など)、甲状腺ホルモンの分泌異常などが考えられます。
過多月経
月経時の経血量が、一般的に平均とされる140mlを上回る状態を、過多月経といいます。この場合、使用している生理用ナプキンが1~2時間程度しか持たず、血の塊が多量に見られる場合もあります。また、月経痛を伴うこともあるため、生活に支障をきたすことも少なくありません。さらに、過長月経を併発する可能性も高く、原因としては、ホルモンバランスの異常や、子宮筋腫や子宮腺筋症といった疾患が挙げられます。
過長月経
通常とされる月経期間は7日間ですが、この期間を超えて(8日以上)続く状態を過長月経と呼びます。過長月経は、過剰な月経出血(過多月経)が発生しやすく、同じ原因(ホルモンバランスの異常、子宮筋腫や子宮腺筋症などの疾患等)で引き起こされる場合があります。また、排卵不全や黄体機能不全によっても引き起こされる可能性があります。